各サイクロンテクノロジーの吸引力持続力対決!
ダイソンの中で吸引力が変わりにくい掃除機はどのモデルなのか?
ダイソンといえば比較的新しいモデルだけでなく、従来のV6/V7/V8シリーズも人気が高いため、新規で購入する人はどれにしようかと悩んでいる人も多いのではないだろうか?
このページでは吸引力といった基礎的なスペックや便利な機能面より、吸引力の持続力の高さを重視している人や&面倒なフィルターのお手入れなるべくしたくない人のために、フィルター目詰まりの原因となる微細なゴミを遠心分離する能力が高いモデルを調べることに。
同社のコードレスクリーナーで新しいV10/V11シリーズのモデルの口コミには、従来モデルよりフィルターが目詰まりしやすいという批判が散見される。実際に筆者もV10やV11を使用した感想は、従来のジョウロ形状をしていたモデルに比べるとフィルターがすぐに汚れるという印象をうけた。
そこで、白黒はっきりさせようじゃないかということで、各モデルに粒径の細かいシナモンパウダーを吸引させて、フィルターの汚れ具合を比較してみることにした。よくハウスダストに見立てて使用される重曹や小麦粉より、さらに小さい粒径で色のついたシナモンパウダーなら、捕集しきれなかった微粒子をごまかしなしで確認できるはずだ。
ルートサイクロン(DC35/DC45)
サイクロン数:6気筒
プレモーターフィルター:サクロンと本体の間に配置
採用されてるモデル:DC16/DC34/DC35/DC45
フィルターお手入れ頻度:1ヶ月毎
ルートサイクロン(Root Cyclone)は、2011年にダイソンが初めて発売したスティック機(DC35)・第二弾目(DC45)に採用されているサイクロンテクノロジーである。当時、国内メーカーのサイクロン掃除機はダストカップ内で空気とゴミを遠心分離していたのに対し、ダイソンのルートサイクロンはダストカップ内で遠心分離しきれない微細な粉じんを、さらに強い遠心力が発生する円錐形のサイクロンで遠心分離する2段式サイクロン構造。
DC35やDC45が発売された2011~2012年頃は、まだ国内の大手電機メーカーは高機能タイプのハイエンド機を発売しておらず、国内での競合となるようなメーカーはエレクトロラックスとマキタしか存在しなかった。どちらの製品もフィルターがすぐに目詰まりして吸引力が低下するため、フィルターが目詰まりしにくいダイソンは魅力的であった。エレクトロラックスのような一段式サイクロン構造はなんちゃってサイクロンと揶揄されるほど集塵効率が悪かった。
DC35やDC45に採用されているルートサイクロンは、新しいモデルに採用されているサイクロンテクノロジーと比べるとサイクロン数が6気筒と少ないものの、粒子の細かいパウダーを吸引させてもフィルターが目詰まりしたり、茶色く汚れることはなかった。古いモデルではあるが、空気とゴミを遠心分離する能力は今でも十分戦える実力。新しいモデルに比べるとフィルターの着脱にちょっとした一手間がかかるが、フィルターが目詰まりしにくいため、個人的には特に問題と感じない。
DC35とDC45は綺麗な空気を排出するポストモーターフィルターや、クリアビン内で詰まったゴミをこそぎ落とす「スクレイパー」が搭載されていないため、当サイトの「ダイソンおすすめランキング」では紹介していないが、Vシリーズのモデルと比べると圧倒的に軽いうえ、フィルターが目詰まりしにくいため、個人的には今も好きなモデル。また、メーカーから禁止はされているが、工具不要でサイクロン部分を分割することができ、水洗いすることができるのも排気の臭いが気になる筆者には嬉しいポイント。
ちなみにモーターヘッドの回転ブラシを力強く回転させるブラシパワーはDC45のほうが向上しているため、カーペットから微細なゴミを掻き出す集じん力はDC45のほうが上となる。DC35だとカーペットの毛足が少しでも長いとブラシの回転スピードが失速しやすいため、床に敷いているカーペットの毛足が長い場合は、DC45のほうがおすすめである。ただし、DC45は充電時間が5.5時間(DC35は3.5時間)かかるため、途中で充電切れになるとすぐに掃除を開始できないデメリットも存在。
2ティアーラジアルサイクロン(DC62/DC74/V6)
サイクロン数:15気筒
プレモーターフィルター:サクロンの中央部
ポストモーターフィルター:本体後部(V6のみ搭載)
採用されてるモデル:DC61/DC62/DC74/V6
フィルターお手入れ頻度:1ヶ月毎
2013年に発売されたスティックコードレスクリーナーの火付け役となるDC62には「2 Tier Radial™ サイクロン」が採用されている。ダイソンは2011年から毎年新しいモデルのコードレスクリーナーを発売しているが、このサイクロンテクノロジーは2017年のモデルまで長く採用され続けた優等生。この頃から国内の大手家電メーカーも独自の特徴を打ち出した高機能タイプのスティック機を発売した。
2 Tier Radial™ サイクロンの特徴は、小さな円錐形のサイクロンを2層に重ねて放射状に重ねたことにより、コンパクトな状態でサイクロン数を6気筒から15気筒に増やした。従来より2倍以上も多いサイクロンと吸引力がアップしたことにより、サイクロン部ではさらに強い遠心力を発生することができるため、フィルターの目詰まりの原因となる微細なゴミを遠心分離する能力は向上しているという。
検証の結果でも吸い込んだ空気と超微細なシナモンパウダーを強力に遠心分離。DC45と同様にフィルターには汚れは一切見られなかった。従来機(DC35/DC45)も空気と微細なゴミを遠心分離能力は高いが、DC62以降は差込式フィルターがサイクロン中央部に配置。手間をかけずにフィルターを着脱できるため、安価な古いモデルを購入するのであればDC62~V6のほうがおすすめである。アレルギー体質の方は空気清浄機にも採用されているHEPAフィルタを搭載しているV6を迷わず選ぼう。
2ティアーラジアルサイクロン(V7/V8)
サイクロン数:15気筒
プレモーターフィルター:サクロンの中央部
ポストモーターフィルター:本体後部
採用されてるモデル:V7/V8
フィルターお手入れ頻度:1ヶ月毎
2016~2017年に発売されたV7/V8シリーズにも、従来モデルに採用されていた2 Tier Radial™ サイクロンが搭載されているが、従来モデルとサクロンやクリアビンに互換性がなくなっているため別物と位置づけて比較することにした。現在、新しいモデルはフォルムがピストル形状に変わったV10/V11であるが、V7/V8にも最新モデルと同じゴミ捨て簡単に行える機構が採用されているため、この2シリーズは型落ちの中では人気が高いモデルとなっている。
検証の結果は、従来のモデルと同様に吸い込んだ空気と微細なシナモンパウダーを遠心分離する能力は高い結果になった。前述した従来モデルと同じ2 Tier Radial™ サイクロンを採用しているため、微細なゴミの捕集能力に差はないと考えて問題ないだろう。同社によるとRoot Cycloneを採用していた従来モデルより、2 Tier Radial™ サイクロンを搭載しているモデルのほうが強い遠心力が発生しているとのことだが、サイクロン部の捕集効率性能に大差はないように感じた。
従来モデルはクリアビンのフタを開けゴミを落とす構造であったが、V7とV8はサイクロンを上方向に引き上げると同時にフタが開きゴミが落ちる構造となっている。サイクロンを上にスライドする際にクリアビンに搭載されたスクレイパーが詰まったゴミをこそぎ落としてくれるため、従来よりゴミ捨てがストレスフリーになっている。このため、型落ちを購入する場合で予算に余裕があるのであれば、ゴミ捨てが簡単になったV7/V8がおすすめである。(V7はV8の廉価版なので使用時間がV8より短い)
ラジアルルートサイクロン(V10/V11)
サイクロン数:14気筒
フィルターユニット:本体後部(2つのフィルタは一体化)
採用されてるモデル:V10/V11
フィルターお手入れ頻度:1ヶ月毎
2018~2019年に発売された新しいモデル(V10/V11)は、サイクロンとクリアビンが直線的に配置されフォルムが従来のものと違いピストル形状に変更された。この変更に伴い、サイクロンが2層に重ねて配置されていた2 Tier Radial™ サイクロンは採用されず、1つ古いサイクロンテクノロジーであるRadial Root Cyclone™(ラジアルルートサイクロン)が採用されている。また、サイクロン中央部に配置されていたプレモーターフィルターは本体後部に配置されていた「ポストモーターフィルター」と一体化された。
2018年にV10の発売が発表されたとき、サイクロン数が少ないラジアルルートサイクロンが採用されことを知ったが、従来モデルよりフィルターが目詰まりしやすくなる不安は微塵もなかった。実際に初期のスティック機(DC35/DC45)に採用されていた6気筒のルートサイクロンでも、フィルターが目詰まりしにくく強い吸引力を維持できたため、それより1つ新しいラジアルサイクロンの集塵捕集効率が低下するとは考えていなかったからだ。
しかし、いつも行っている吸引力検証動画を撮影した時や、一ヶ月ほど家で使った時に異変に気づいた。これまでは吸引力検証で微細な小麦粉やオガクズを吸引してもフィルターが汚れることはなかったが、V10はフィルターに小麦粉が付着していたのだ。さらに家でメイン機として毎日使用したところ、これまで長く使用しないとフィルターに付着しなかった、粉じん・綿埃・猫の毛がわずか一ヶ月で大量に付着したのだ。
さらに翌年発売されたV11も集塵捕集効率の悪さは改良されず、V10と同様に毎日使用した場合は、一ヶ月ほどでフィルターを水洗いしないといけないほど汚れるのだ。V7やV8といった前モデルはおろか、それ以前のDCシリーズより空気と微細なゴミを遠心分離する能力が低下している思っていたが、今回の検証の結果でもやはりラジアルサイクロンを採用しているV11は、ルートサイクロンや2ティアーラジアルサイクロンを採用しているモデルよりフィルターが茶色く汚れた。
ただし、一段式サイクロン構造を採用しているメーカーに比べると、V10やV11は一ヶ月ほど使用しても吸引力の低下はあまり感じない。また、ダイソンのコードレスクリーナーのフィルターのお手入れ目安は1ヶ月に1度を推奨しているため、マニュアル通りフィルターを1ヶ月に一度水洗いする場合は、お手入れの頻度はV10/V11も従来モデルも変わらない。性能や機能関係なしに、フィルターのお手入れを少しでも少なく済ませたいor吸引力を少しでも持続させることを重視した場合は、従来モデルのほうが適しているという結果に至った。
フィルターが目詰まりしにくいモデルの検証まとめ
●V10/V11は従来モデルよりフィルターが目詰まりしやすい
●月1回フィルターを水洗いする場合、お手入れ頻度は従来モデルと変わらない
●月1回フィルターを水洗いする場合は、V10/V11を選んでも後悔しない
●フィルターのお手入れをサボりたい場合は目詰まりしにくいV8以前が最適
●V6以降のモデルはポストモーターフィルタを搭載→排気性能が向上
●V7以降のモデルはスクレイパーを搭載→ゴミ捨てが簡単
検証の結果、新しいフォルムのV10/V11に採用されているラジアルサイクロンは、従来モデルに採用されていたルートサイクロンや2ティアーラジアルサイクロンよりフィルターが目詰まりしやすい結果になった。なるべく面倒なフィルターのお手入れをサボりたい場合や、強い吸引力が持続するモデルを選択したい場合は、V8以前のモデルを選ぶとよいだろう。
ただし、V10とV11が同社のモデルの中で目詰まりしやすいと言っても、競合メーカーに比べるとフィルターは目詰まりしにくい部類となり、吸引力も低下しにくい。また、V11を家庭で一ヶ月使用しても、フィルターのお手入れランプは点灯しなかった。このため、同社のコードレスクリーナーのマニュアルで推奨されているように、フィルターの水洗いを月に1度行う場合は、V10やV11を選んでも後悔することはないだろう。
ダイソンが販売しているコードレスクリーナーのサイクロンテクノロジーや付属されている専用ツールが一目でかんたんに分かる性能比較表は下記の赤いボタンからどうぞ。